近年「自己肯定感」という言葉を耳にする機会が増えました。
子育てや教育の場面だけでなく、大人自身が「もっと高めたい」と願う言葉としても注目されています。
では、「自己肯定感」とは具体的にどのような感覚を指すのでしょうか。
文部科学省の定義によると、自己肯定感には2つの側面があります。
自己肯定感とは?
努力によって得られる自己肯定感
ひとつ目は「勉強やスポーツなどの競い合いや挑戦の中で、努力を重ねることによって得られる自己肯定感」です。
達成感や成功体験が、「自分にはできる」「自分は役に立つ」という感覚を支えます。
自分らしさを受け入れる自己肯定感
もうひとつは、「自分の短所や弱さを含めた個性を、そのままの形で受け入れることから生まれる自己肯定感」です。
こちらは比較や競争ではなく、「他人と違っていていい」「そのままの自分で価値がある」という自己理解を基盤としています。
自己肯定感が育まれる環境
自己肯定感が育まれるには、「自分らしさを表現しても否定されない環境」が必要不可欠です。
家庭や学校などで、ありのままの姿を受け止めてもらえる経験が、心の土台となります。
子どもの自己肯定感を育てる環境
親や大人との関係性
子どもにとっての第一の環境は、家庭です。
愛情をもって接し、存在そのものを肯定してもらえる経験(抱きしめてもらう、名前を呼ばれる、話を聞いてもらうなど)が、土台となります。
「あなたがいてくれて嬉しい」「大丈夫だよ」という言葉がけは、子どもの安心感を育てます。
失敗を許容する空気
「間違っても大丈夫」「失敗しても愛される」という実感がある環境では、挑戦や工夫への意欲が高まります。
失敗のたびに責められる環境では、恐れから自己否定感が育ってしまうこともあります。
自己表現が許される場
「こう言ったら怒られるかも」「言ってもムダ」と思わされる環境では、自己開示がしにくくなります。
自由に意見を言えたり、感情を出せたりする場があることが、自己肯定感の育成につながります。
大人の自己肯定感を育て直す環境
比較や評価から距離を置く
過度な競争や他人との比較は、自信を奪い、自分の価値を見失う原因になります。
安心して「できる・できない」ではなく「自分らしくいられる」場を持つことが、自尊感情を守ります。
話を聞いてもらえる関係性
自分の考えや感情を否定せずに受け止めてくれる人がいると、自己理解が進みます。
対話の中で「これでよかったんだ」と気づく体験が、自己肯定感の回復に役立ちます。
小さな成功体験を重ねられる場所
「ありがとう」と言われる、小さな役割を果たせるといった体験を通じて、「自分にもできることがある」と実感できます。
評価よりもプロセスを大切にしてくれる環境でこそ、大人の自己肯定感は育ちます。
自己肯定感が育つ環境の共通点
- 安心して本音を話せる空気がある
- 失敗しても責められず、受け止めてもらえる
- 「存在そのもの」に価値があると感じられる
- できたことを認め、喜びを共有してくれる人がいる
こうした環境の中では、人は自然と「自分は大丈夫」「自分にも価値がある」と思えるようになります。
まとめ:環境は“土壌”、自己肯定感は“根”
自己肯定感は、才能や努力とは別に、「自分の存在そのもの」をどう受け取るかに関わる大切な感覚です。
その根を育てるには、安心して自分らしさを出せる「土壌=環境」が必要です。
子どもにも大人にも、まずは自分を否定せずに受け止めてくれる場を届けていくこと。
それこそが、自己肯定感を育てる第一歩となるのではないでしょうか。
自己肯定感の高い人の特徴
自己肯定感が高い人は、以下のような特徴が見られます。
- 成功体験を前向きに捉え、挑戦に意欲的
- 失敗しても自分の価値を損なわず、立ち直る力がある
- 「自分は愛されている」「存在していていい」という安心感がある
- 他者との関係もポジティブに築きやすい
自己を信じる力があるからこそ、社会との関係性においても前向きに対応できるのです。
大人になってからでも自己肯定感は高められる
低い人の傾向とは?
自己肯定感が低い人には、次のような傾向があります。
- 過去に否定された経験が多く、褒められる機会が少なかった
- 「怠けたい」「嫉妬する」などの感情を自分で受け入れられない
- 他人との比較で自分を批判しがち
- ネガティブな感情をコントロールできず、自己嫌悪に陥る
そのような人に対して「ポジティブに考えよう」「前向きになろう」といったアドバイスは、かえってプレッシャーになることもあります。
まずは“ありのまま”の自分を認める
自己肯定感を高める第一歩は、「負の感情も含めて、それが自分なのだ」と認めることです。
「こんな自分じゃダメだ」と責めるのではなく、「そう感じてしまうのは自然なこと」と受け入れる姿勢が大切です。
そして、自分を否定するような人間関係や環境からは、少しずつ距離を取るようにしましょう。
小さなチャレンジを積み重ねる
自己肯定感は、一気に高めようとしてもうまくいきません。
重要なのは、「無理なく続けられる小さな挑戦」を日常に取り入れていくことです。
例えば以下のような習慣を意識してみてください。
- 「自分は大丈夫」と肯定的な言葉を口に出す
- 好きな音楽を聴いて気分を整える
- 信頼できる人に気持ちを話してみる
- 「昨日の自分より一歩進んだ」ことを日記に書く
「完璧にやろう」と思わず、うまくいかない日があっても大丈夫。
「続けること」が、自分への信頼感を少しずつ育てていくプロセスになります。
まとめ:自己肯定感は“育てるもの”
自己肯定感は、生まれ持った性格ではなく、環境や経験によって育まれる感覚です。
そして大人になってからでも、その感覚は丁寧に育て直すことができます。
他人と比べず、自分にとっての“心地よい”を少しずつ積み重ねながら、「そのままの自分でいい」と思える瞬間を増やしていきましょう。
今日からできる、ひとつの優しい習慣。それが未来のあなたの「自己肯定感」につながっていくのです。
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